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禅と骨 予告動画

禅と骨 作品情報

映画「禅と骨」は中村高寛監督によって、2017年の9月2日に劇場公開されています。映画雑誌「キネマ旬報」などで執筆活動も手掛ける個性派の映像作家が、2006年に「ヨコハマメリー」を発表して以来11年ぶりにメガホンを取りました。ヘンリ・ミトワというひとりの日系アメリカ人が辿っていく数奇な運命が、ドラマとドキュメンタリーによって映し出されていきます。

禅と骨 キャスト・スタッフ

禅と骨 あらすじ

ヘンリ・ミトワはアメリカ人の父親と日本人の母親の間に、1918年に神奈川県横浜市で3人兄弟の末っ子として生まれました。父はドイツ系アメリカ人で、映画会社のユナイテッド・アーティスツの極東支部長にまで出世しました。母親・こうは新橋で芸者として働いていた経歴がある気丈な女性です。ヘンリが9歳になると父と次兄はアメリカに帰国しますが、彼は母と長兄と共に横浜に残ることを選びます。家族を呼び寄せてアメリカで一緒に暮らすことを父は考えているようでしたが、1929年の世界大恐慌の影響もあり日本への月々の生活費の送金さえままなりません。一方で日本国内は次第に軍国主義が加速していき、アメリカ国籍を持つヘンリは肩身が狭い思いをしていくのでした。

禅と骨 評価

各映画レビューサイトから「禅と骨 」の評価を集めました。

禅と骨 見どころ

ウエンツ瑛士と余貴美子の配役がズバリ的中

主演のウエンツ瑛士が実在するヘンリ・ミトワに纏わる、若き日の数々の武勇伝を体現していきます。バラエティー番組やテレビドラマでお馴染みの親しみやすいイメージを封印して、シリアスな表情と迫真の演技を披露していました。自身も1985年にドイツ系アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれたルーツを持ち、ふたつの故郷に挟まれて揺れ動く主人公にピッタリとはまっていますね。ヘンリの母・こうを演じている余貴美子も、確かな存在感を発揮していました。自宅の一部を賭博場として貸して収入を得る豪放磊落さは、息子にも受け継がれていることを感じます。終始一貫して姉御肌を崩すことのなかった彼女が、思わず弱さを見せるシーンは必見です。

ドラマにドキュメンタリーを合わせてアニメを加える

再現ドラマの合間に監督が実際にヘンリ・ミトワにインタビューした映像が挿入されていく、異色のスタイルから映画は進行していきます。これまでのドキュメンタリードラマにありがちな、撮影する側とされる側の友好的なムードや馴れ合いは一切ありません。お互いの気持ちを隠すことのなくありのままにぶつけ合い、時には見解の相違から烈しい言い争いへと発展してしまう場面がスリリングです。「混血の禅僧」としてメディアから取り上げられて脚光を浴びていた一面ばかりではなく、自分自身のアイデンティティーについて思い悩んでいた素顔を垣間見ることが出来ました。ドラマ・ドキュメンタリー更には、イラストレーター兼マンガ家として創作活動を続けている今日マチ子のアニメーションまで用意されていて遊び心満点ですよ。

横浜を愛する俳優やミュージシャンたちが奏でるハーモニー

本作のナレーションを務めているのは、個性派俳優として数多くの日本映画での活躍を続けている仲村トオルです。22歳の時に映画デビューを果たした「ビー・バップ・ハイスクール」で、1987年の第8回ヨコハマ映画祭では最優秀新人賞に輝いたのが懐かしく思い出してしまいました。横浜スタジアムでのコンサートで多くの観客を熱狂させている横山健や、横浜市山下町生まれのギタリスト・エディ藩がオープニングテーマやエンディング曲を担当しています。劇中歌を提供しているのは、若き日に横浜市内のアメリカ軍キャンプや将校クラブを廻っていた逸話を持つ中村裕介です。個性豊かなアーティストが吹き込んだ横浜への熱い思い入れを、存分にサウンドから感じ取って下さい。

禅と骨 感想・レビュー

苦難に満ちた青年期と成功を掴んだ壮年期

第二次世界大戦下での横浜市内で電気工事士として働いたヘンリが警察にあらぬ疑いをかけられて、氷川丸でアメリカに逃げるシーンなどはスパイ映画の迫力にも負けてはいません。ようやく辿り着いた「自由の国」では、日系人として謂れのない差別や待遇を受けた末に収容所へ収監されてしまうほろ苦いエピソードも盛り込まれています。過酷な戦中と大切な人との別れを乗り越えたヘンリが、技術者として成功を収めていく様子が痛快でした。戦争の時代にはハンディキャップとされていた日米の混血というステータスを、一転してアピールポイントへと利用していくところが実に強かです。経済界の有力者たちとも互角に渡り合っていくヘンリは、京都の茶道会へ活躍の場を広げつつ仏教界へと進出していきます。

横浜の喧騒から京都の静けさへ

京都市の右京区にある臨済宗天龍寺系の禅寺・埠頭南芳院が、ヘンリが1973年から亡くなるまで住職を務めていたお寺です。隣り近所には世界遺産にも指定されている天龍寺や野々宮神社に二尊院なども立ち並んでいて、実に厳かなムードが漂っていました。南芳院の南には嵐山でも有名な観光スポットである渡月橋が掛かっていて、桂川の雄大な流れを眺めることが出来ます。若き日のヘンリが過ごした横浜の賑わいとは、およそ似ても似つきません。静けさと歴史に恵まれたこの地で禅寺の僧侶として生きることを選んだ、ヘンリの胸の内に思いを巡らせてしまいました。第二次世界大戦中は敵国人種、戦争終結間もない頃は異端者。波乱万丈な人生の中でようやく安住の地となった京都は、戦後の日本が与えたヘンリへの祝福なのかもしれません。

ヘンリが残したものと受け継がれていく記憶と命

2012年の6月1日、本作品の完成を待たずしてヘンリが93歳でこの世を去ってしまったことが残念でなりません。お通夜に訪れた多種多様な顔ぶれからは、数多くの人たちと交流を深めて愛されていたことが伝わってくるはずです。。告別式の模様も固定されたカメラから淡々と映し出されていて、そこには妻・サチコ、長女・京子、次女・静の3人の女性たちが佇んでいました。更にはヘンリにとっては孫に当たる、京子や静の幼い子供たちも顔を揃えています。ヘンリがこの国に残したものは、陶芸家や文筆家としての優れた作品ばかりではありません。ひとりの人間として生きた証が、ふたりの娘とその次の世代を通して確かに受け継がれていました。式の最後でサチコによって読み上げられた、愛憎半ばする日本への想いと仲間たちに残した最後のメッセージには強く心を揺さぶられます。

禅と骨 SNSでの評判は？

Twitterから「禅と骨」の評判をまとめました。

【まとめ】禅と骨の動画を無料で見るなら

時には「青い目の禅僧」と揶揄されることもありながら最後まで自分の生き方を貫き通したヘンリ・ミトワからは、大いなる勇気を貰えました。茶道や禅に代表されるような我が国古来からの伝統文化に興味を持っている方たちは、是非ともこの1本をご覧になってください。身近にあって気が付かなかったわびさびの素晴らしさや、生まれ育った街並みの心地良さや地元の人たちの温かさを噛み締めることが出来るはずです。中村高寛のデビュー作「ヨコハマメリー」は、「白いメリーさん」の都市伝説と戦後の横浜の移り変わりを捉えたこれまた異色の作品になっています。本作品と合わせて鑑賞して頂くと、より一層中村監督が紡ぎだすその独特な世界観を楽しめるでしょう。